朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
流夜くんが手にしていた筆箱が宮寺先生の顔ギリギリに飛んで、壁にぶつかって、落ちた。
近くにいた生徒も私も笑満も、沈黙してしまった。
手早く文具を回収した流夜くんは、その間に宮寺の首根っこ摑んで無理矢理連行していく。
「え……神宮先生……?」
楽しそうに話していたところを意味のわからない退場をされて、気の抜けた声しか出ない様子の生徒たち。
私も一瞬呆気にとられたけど、明らかに流夜くん――わざとやった?
「笑満、保健室行こう」
「え、入れるのかな?」
「大丈夫。裏廻る」
笑満を導いて、一度校舎を出てから保健室の裏手の窓の並びに廻った。
――ところで、死角になる場所に流夜くんを見つけた。
やばっ。笑満を制して、壁に隠れるように身体を低くした。