朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


生きていることを赦(ゆる)してもらうためにがんばっていた。


私が話した唯一の流夜くんはそれを知って、『がんばらなくていいから胸を張って生きろ』と言ってくれた。
 

今は、『流夜くんの恋人』と胸を張って生きるために、がんばりたい。


……それだったら、いいかな。
 

それを流夜くんに言ったら、そんなことがんばる必要ないだろう、とか言われるかもしれない。


でも、これは女子的意味あいだ。


だから、それは流夜くんには秘密。


「……遅いな」
 

流夜くんが出て行ってから、もう十分近くなる。


最初は、説得に苦労して帰ってこないかと思っていたけど、なかなか遅すぎる。


先日、在義父さんからも《白》解禁令が出ているから、今は堂々とお店に入れる。


行ってみようかな。


「こんにちはー」
 

猫の首輪みたいな鈴を鳴らしてドアを開けると、途端に大声が響いた。


「だからなんであんたは――!」


「だからお前はもう俺と結婚しろ! ずっと大事にするって決めてるから!」
 

………。


「へ?」
 

私からは思わず間の抜けた声。


店内では大声で、降渡さんが全力プロポーズしていた。






END.


4話『朧なはなの咲いた夜』に続く。


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