朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
「おーい、離せよ神宮」
呼ばれて、流夜くんは引きずっていた宮寺先生の、今度は胸倉摑み上げて壁に押し付けた。……え?
「何でお前がここにいる」
……『神宮先生』の仮面がまるっと剥がれてしまっている。
知り合いなのかな?
それにしても声が怖い。
初めて聞く、低い響きだ。
吹雪さんたちに対する様子とも全く違っていて驚いた。
鬼気迫る様子の流夜くんに、宮寺先生はのんびりと答える。
「今度の講師、俺」
「……ちっ」
今度は舌打ち⁉
一体どうしたの。
また流夜くんが宮寺先生を引きずって歩き出したので、その先は保健室だろうと見当をつけて笑満に肯いて見せた。
校内と校外では、造りの所為で私たちの方が先につけるはずだ。
ショートカットして走った保健室にはまだ流夜くんたちはいなかった。
「どうしたの、咲桜ちゃん」
夜々さんが気付いて窓を開けてくれた。
「今、流夜くん来ると思うから、私たちがここにいるの黙っててほしいの」
「? 神宮さん? わざわざ敵の牙城の入ってこないと思うけど……」