朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
side流夜
……面倒くさいことになった……。
保健室を出て、空き教室に入った。
声のないところで少し落ち着かないといけない。
宮寺が来ること、意識を払っていなかった。
それは俺の失態だ。申し開きもない。
ただ俺が教師をしていて、そこに宮寺が来た。
昔の縁で今も睨まれている、それだけならばいいのだが……今は、俺には咲桜がいる。
咲桜との関係を護り、同時に宮寺も相手どらなければならない。
両方ともやれる気概はある。問題はない。
……きついのは、学内で咲桜に逢える時間が減ることが目に見えていることだった。
俺が旧校舎に入り浸っていることなど、宮寺ならすぐに知れることだ。
そこに咲桜が頻繁に出入りしていれば、どういう関係かと疑うだろう。
それは避けたい。
そうなると、咲桜にしばらくは旧校舎へ来ないよう言うしかない。
……自分は日義の場合と違って咲桜に言えないこともないから、不安にさせることはないと思うけど――危ないのは自分だった。咲桜に逢いたくて。