朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


宮司のこと、逢って説明したい。


面倒、行き違いが起こる前に手を打っておきたいのだが――こちらも捨て置けない内容だ。


犯罪事件は、被害者家族は一刻も早い解決が待たれる。


生まれたときからその渦中に置かれた身としては、身を切るほどそれを思い知っている。
 

宮司がまだぼけっと突っ立っているのを横目に見て、咲桜にメッセージを送った。


今日は行けなくなった、と。


……咲桜に逢いに行く約束を自分から取り付けたのに、自分でそれを破る。


……もの凄く、心が痛い。


咲桜のことだから、――異端の警察官を父に持つ咲桜だから、俺の状況も理解してくれるだろう。


でも、やはり淋しい思いはさせてしまうのかもしれない……。


愛しさに現実は優しくない。


試すようなことばかり起こしやがって。


……まあ日義の件は、それがきっかけで咲桜との距離が近くなったような気がするけど。

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