朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「雲居たちに聞いたんだけど、あいつらが中学を卒業して、高校に入るまでの間に、育ててくれた二宮さんのお祖父さんが亡くなったんだって」


「あ……」
 

引き取り手のなかった流夜くんを育てたのは、在義父さんの相棒であり、元警官である二宮龍生さんのお祖父さんだと聞いた。


猪を鍬(くわ)で狩るようなご老人だったそうだ。


「雲居も二宮の祖父さんとこで育ってるけど、あいつは家族の記憶あるから、やっぱ違うんだろうな。神――あいつの方は、疎まれていた親戚しか知らないから。……家族みたいに育ててくれた唯一の人が死んで、焦ってた、って言うのかな。たぶん、早く逢いたかった気持ちが強かったんだと思う」
 

唯一存在するかもしれない、家族――姉に。


「流夜くんって、桜庭生だったんだっけ?」

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