朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


無理矢理話を変えた。


これ以上自分の感情をさらすことを言ったら、それこそ戻れなくなる。


って言うか引かれるって。


笑満ちゃんははっとしたように俺を見て、頭をぶんぶん振った。


「あ、これ咲桜にもらったの。美味しーよ」


「ふーん」
 

誰かに作ってもらう弁当……憧れる。


最近神宮は咲桜の手作り弁当をいただいていて、何度かかすめ取ったりした。


でもそれは咲桜が神宮のために作ったものだから、神宮が食べているものとは味が違うんじゃないかと思う。


「咲桜って料理上手いよなー」


「うん! すっごい上手!」
 

急に笑満ちゃんの瞳がキラキラしだした。


……咲桜が褒められると自動的に笑満ちゃんも嬉しくなるらしい。仲いーな。


ちょっと妬ける。


「遙音くんは、パン?」


「うん。大体バイト先でもらったヤツとか」


「そうなんだ」
 

俺は頼れる親族がいないので、高校からは一人暮らしをしている。


バイトも学校に申請して許可をもらっていた。


学費は、特待生として入ったので免除されていた。


「食べる?」


「いいの?」
 

笑満ちゃんが箸に卵焼きを摘まんで差し出してくれた。


俺の声も明るくなった。

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