朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「え……大丈夫なんですか?」


「大丈夫だよ。俺は宮寺に面割れてるし。あいつが旧校舎を住処にしてるって知られても、近づいちゃダメはあいつが来る三週間だけだろ? 別に俺だったらばれても構わないし」


「そう……なのかな?」


「そうだろ。大体、あいつがそんなにお前を離しておけるわけないと思うよ。あんな病気的にお前に惚れこんでるんだから」


「ちょ、病気とか言わないで下さいよ。評価がおかしい」


「……今までのあいつを知る人間としてはそんな評価になるんだよ……」
 

哀愁の遙音先輩。そんなに想像できないのだろうか、今の流夜くんは。


「……お願い致します」

 
献上するように包みを差し出した。先輩は笑顔で受け取る。


「りょーかい。じゃ、今から行ってくるわ。笑満ちゃん、今日一緒に帰ろ」


「えっ、う、うんっ」


「行ってきまーす」
 

笑満が肯いたのを見て、意気揚々と駆けて行った。


なんと爽やかで鮮やかな誘い方! い、今のやってみたい! 
 

こっそり憧れていると、笑満がそろそろと寄って来た。


「さおー」


「ん、ん? どうした?」


「あのさ……料理、教えて?」


「作るの?」

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