朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】


「………」


「ください、とかねーの?」


「……作ってくれたのは咲桜だろう」
 

イライラから眉間がつりそうだ。


遙音の顔は今にも吹き出しかけている。


「でも持ってきてやったのは俺だけど?」


「………咲桜の弁当ください」
 

……不承不承ながら、本心に反してついに遙音に敬語を使った。


遙音、臨界点を超えたらしい。


「ぶははははははっ! おめーどこまで咲桜に弱―んだよ! お前が俺にんなこと言うなんてアホみてー!」


「黙れ! いいからさっさと寄越せ!」
 

ずかずか歩いて腹を抱える遙音から弁当の袋をひったくった。


「くそっ、やっぱさっさと教師辞めるかな……」
 

その小さな声が聞こえたらしい遙音から笑いが収まった。


「それ困んだけど。俺、お前がいるからここ入ったんだし」
 

元いた椅子につく。


遙音は机の前に立って、腕を組んだ。

< 87 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop