朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
「………」
「ください、とかねーの?」
「……作ってくれたのは咲桜だろう」
イライラから眉間がつりそうだ。
遙音の顔は今にも吹き出しかけている。
「でも持ってきてやったのは俺だけど?」
「………咲桜の弁当ください」
……不承不承ながら、本心に反してついに遙音に敬語を使った。
遙音、臨界点を超えたらしい。
「ぶははははははっ! おめーどこまで咲桜に弱―んだよ! お前が俺にんなこと言うなんてアホみてー!」
「黙れ! いいからさっさと寄越せ!」
ずかずか歩いて腹を抱える遙音から弁当の袋をひったくった。
「くそっ、やっぱさっさと教師辞めるかな……」
その小さな声が聞こえたらしい遙音から笑いが収まった。
「それ困んだけど。俺、お前がいるからここ入ったんだし」
元いた椅子につく。
遙音は机の前に立って、腕を組んだ。