朧咲夜3-甦るは深き記憶の傷-【完】
思わず俺の声が上ずっていた。
遙音は、「咲桜に言わねーようにだよ」と付け足した。
「話しておかねーと頼に何されるかわかんねえからな。あいつ、下手に首突っ込んで戻れないとこまで深入りしちまうタイプだろ」
「ああ……お前にそっくりだな」
「……俺と並べるなよ」
遙音、心底嫌な顔をした。
遙音も、首突っ込んでもう戻れないほど深入りしてしまっている。
――本当なら、俺たちの方ではない世界だってあったのに。
俺らはそれを自戒している。遙音はそれを知って、それでもここにいる。
「……遙音、お前なんで咲桜のこと名前で呼ぶんだ?」
「あ? 名前で呼ばねーでどうすんだよ」
「そうじゃない。お前、大概は苗字で呼ぶだろ」
「あー。……って言われても、華取って言ったら華取本部長になるじゃん? なんか俺の中では『華取』って名前はあの人しかいねーから」
「………」
――咲桜の家庭のことは少し話したが、咲桜と在義さんの血縁関係については、遙音は深くまでは知らないはずだ。