Black Romeo and Juliet
「なんでそんなにこだわる?」


「……それだけの為に育てられたから」


両親は国家楽団に入れる為にわたしを育てた。


両親はわたしの才能を愛した……。


我が家に国家との繋がりが生まれれば、父も兄も出世することが出来る。


それなのに……、



「事故で指を失った」


ヴァイオリンが弾けなくなったわたしは……両親の愛さえも失った……。



「生きたくない……価値がない……」



目の前の彼は表情なんて変えず、頷きもせずにただ黙っている。


そして、


「じゃあ……とりあえず、熱下げてから死ねよ」


そう言って、彼はまたわたしの額に触れる。


やっぱり彼の手は冷たかった。


「寝ろ」



そして、



再びベッドに沈んでいく……。





次に目覚めたときには、



辺りは真っ暗の夜中になっていた。



彼の姿は無く、


ただ部屋の壁越しに、




吐きそうなくらい下品な女の喘ぎ声が一晩中聞こえてきた……。








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