Black Romeo and Juliet
「……剣士だったの?」



彼の細身の体には、いくつかの刀傷があった。



「……昔な。国家騎士団にいた」



国家騎士団といえば……剣士のエリート。


選ばれた人間のみが所属する場所。


「なんで辞めたの?」

「辞めさせられた」

「なんで?」


「戦えなくなったから」



わたしの質問に淡々と答える彼。



それ以上何も聞けなくて……、



わたしは口を閉ざした。



「俺もおまえと同じ。……物心がついたときから剣しか握ったことがなかった」



「いざ、剣が握れなくなったら何も残らない人間になってた」


「だから……体売ってんの?」



隣で横たわってる彼に、顔を上げて尋ねる。



彼はそっとわたしの髪に触れ、



小さく頷き、微笑んだ。



「親の顔も知らない。名前も与えられなかった人間に、生きていく術なんて他に無かった」



「……孤児だったの?」



「そう。騎士団の剣士に拾われて、剣術は叩き込まれたけど、他の知識は無い。字はほとんど書けないし、読めない」



体を売るのは、落ちぶれた人間……。



これは取り消す……。



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