処刑バッヂ
追いかける側の3人の中で、最も苦しい思いをしているのはツクシかもしれない。


「あうぅ……ああぁ……」


目の前までやって来た麻央はわけのわからない言葉を発し、口の端からヨダレを垂らしている。


手には食べ物が握りしめられているけれど、強く握りしめられているせいで原型をとどめていなかった。


あたしは恐怖心を押し殺して麻央の目を見つめた。


今は灰色になっている。


アラームが鳴り終わってすぐだから、暗示が弱くなっているのだろう。


「麻央、若菜だよ。わかる?」


あたしは麻央の前で手を振ってみせてそう言った。
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