処刑バッヂ
「あ……あぅあ……」


ダラダラと唾液を垂れ流す麻央。


その様子を見ているだけで悲しさが込み上げて来た。


いつも一緒にいた友達がこんな風になってしまうなんて、悲しすぎる。


「麻央、しっかりして!」


あたしは麻央の肩を掴み、強く揺さぶった。


「少しでいいから、いつもの麻央に戻ってよ!」


そう言いながら、いつの間にか涙が浮かんできていた。


ここまで必死になったのは人生で初めてのことかもしれない。


「ねぇ麻央、聞いて? 麻央はクリスマスになにか覚えがない? 中学3年生の時のクリスマス!」


あたしは麻央に届くようにそう聞いた。


麻央は相変わらず灰色の目をあたしへ向けている。
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