処刑バッヂ
麻央はその名前を言ったとき、なぜだか苦しそうに表情を歪めていた。


「え……?」


「みんな、たぶん覚えてないと思う。真奈はあたしと同じ塾で、あたしとだけ仲が良かったから」


「真奈……」


その名前を呟いてみても、思い出すのは知らない少女の顔ばかりだった。


あれが真奈ちゃんだったんだろうか。


「あの時、あたしたまたま真奈と一緒に塾を出てみんなと合流したの。それでクリスマスの話しになって、一緒にいた真奈も誘った」


「そう……だっけ……」


あたしは下唇をきつく噛んだ。


麻央と一緒にいた子のことを、スッカリ忘れてしまっていたのだ。
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