ヴァーチャル・リアリティ
『裏切者は綾瀬梨花子さんに決定しました』


アナウンスの声がいつもよりも冷たく感じられた。


あたしはその場に膝をつき、肩を振るわれて嗚咽を漏らした。


咄嗟に手に取った写真を見おろすと、梨花子の困惑した表情と視線がぶつかる。


これは建物へ入った時の表情だけど、今自分へ向けられているもののような気がした。


どうして?


梨花子がそう言っているように思えた。


『これから鬼がそちらへ向かいます』


アナウンスの声にあたしは顔を上げた。


「なに……?」


思わず声を漏らす。


鬼がそちらへ向かいます?


ハッとして振り向くと、さっきまで後ろにいた赤鬼の姿がなくなっている。


あたしは振るえる両足で無理やり立ち上がった。

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