ヴァーチャル・リアリティ
包帯を巻いて手当てをされているが、そこから先は消えている。


それを見た瞬間ここがまだゲームセンターの中なのだと気が付き、強烈な吐き気に襲われた。


口もとを押さえ、必死に胃の中に押し込める。


「大丈夫?」


アユが心配そうにあたしの背中をさすってくれる。


あたしは何度か深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。


「晴道は……?」


部屋の中にはあたしたち3人の姿しかない。


だけど、晴道も最後まで一緒にいたはずだった。


「いて……」


小さな呟きが聞こえてきて視線を向けると、悠太郎が目を覚ましたところだった。
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