ヴァーチャル・リアリティ
「晴道はどこへ行ったのかわからない。あの後あたしたちも眠らされて、気が付いたらここにいたの」


アユが早口に説明してくれた。


気を失う寸前で、晴道は『もう少し、俺と一緒に遊んでよ』と言っていた。


あれは一体どういう意味だったんだろう。


嫌な予感がして、あたしは自分の体を強く抱きしめた。


まるでなにかを知っているような言い方だった。


「ねぇ、アユ……」


あたしはアユの右腕へ視線を向けてそう言い、途中で口を閉じた。


聞かなければならない。


けれど、聞く勇気がなかった。


躊躇しているあたしを見てアユは何かを察したのか、笑顔を見せてくれた。
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