ヴァーチャル・リアリティ
「まさか、晴道が……?」


そう呟いたあたしに、アユがサッと青ざめた。


「晴道ならできるかも。男だし、意外と筋肉質だし」


「他に誰か仲間がいたとしても、晴道が裏で糸を引いてたってことには間違いなさそうだな」


悠太郎はそう言って包帯が撒かれている足を撫でた。


その姿は見ているだけでひどく痛々しい。


ずっと見ていることもできなくて、あたしは床へと視線をうつした。


「一体なにが目的なんだろう……」


さっきまで夢に見ていた卒業式は、あたしたちには二度と訪れないものなのだ。


そう思うと胸が締め付けられる。
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