ヴァーチャル・リアリティ
でもその前に、この建物から脱出しなければならないのだ。


あたしは立ち上がり部屋の様子を確認した。


片面がガラス張りになっていて、その向こうは小部屋になっている。


さっきまでいた部屋と変わりない。


だけどドアはなく、入って来た場所がどこなのかわからない。


「ここから脱出する方法だってあるはず……」


壁に沿って歩き、指先で壁の感触を確認していく。


それだけでなにかがわかるとは思えなかったけれど、少しでもいいからヒントが欲しかった。


『みなさまおはようございます』


部屋をグルリと一周した所で、見計らったようにアナウンスが聞こえて来た。


あたしはその場に立ち止まり、天井を見上げる。


『脱出ゲームお疲れさまでした』


「ゲームは終わった。ここから出せ!」


悠太郎がそう叫ぶが、アナウンスの声は反応しない。


『続いてVR体験を行いたいと思います』


アナウンスの声にあたしたちは思わず顔を見合わせていた。


まだ何かが続くと言うのか。
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