ヴァーチャル・リアリティ
タイムリミットに関するアナウンスは流れてこない。


けれど病院の外で突っ立っているワケにもいかず、あたしは動き出した。


コンクリートを踏みつけて院内へと入って行く。


受付は閉まっていて、ひとの気配もない。


明かりがついている部屋は5階だった。


それを思い出し、案内標識を確認しながらエレベーターへと乗り込んだ。


エレベーターが上昇して行く感覚があり、足元が少しふらついた。


「分娩室だ」


悠太郎はあたしより少し先に到着したのか、そう言った。


その言葉を頼りに5階の廊下を歩く。


廊下は小さな照明がつけられているだけだけど、その奥の部屋が明るく光っていることに気が付いた。
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