ヴァーチャル・リアリティ
やがて足首に赤ちゃんを識別するためのバンドが付けられて、ようやく母親の元へと戻される。


暖かな体に抱きかかえられたが……そこで違和感があった。


医者たちが出て行った後、誰の声も聞こえてこないのだ。


出産に立ち会った人はいないんだろうか。


あたしを抱いている人が深いため息をもらす。


それは喜びとはかけ離れたため息で、あたしの胸に灰色のモヤがかかったように感じられた。
< 149 / 220 >

この作品をシェア

pagetop