ヴァーチャル・リアリティ
しかし、2人はこちらに一瞥もくれずに外へ出て鍵をかけてしまった。


残されたあたしは一生懸命声をかける。


2人に届くように声をかける。


しかし、玄関のドアが開く事はなかった。


薄暗い部屋の中、たった1人残されたあたしはしばらくの間泣いていた。


生まれた時と同じように、生きて行くために必死になって泣いていた。


しかし、いくら泣いても誰も来ない。


誰もいない。


その事に気が付くと、途端に空腹感が襲って来た。


何日もまともに食べていないような、胃がキシムほどのひどい空腹感だ。


あたしは冷蔵庫を開けて中を確認した。


小さな手ではドアは重たく、片手で開くことはできなかった。
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