ヴァーチャル・リアリティ
普段温厚な百花が苛立ちを表面に見せるのは珍しい。


あたしは申し訳ない気分になりながら、頭をかいた。


『そう……だったよね……?』


曖昧な返事に百花は大げさなため息を吐き出した。


『それで、今度あたしの叔父さんが船を出してくれることになったの!』


『船……? そう言えば百花って親戚に漁船持ってる人がいるんだっけ?』


『そう! その叔父さんに頼んだら快く了承してくれたってこと!』


百花はそう言い、飛び跳ねんばかりに喜んでいる。


つまり、あしたからの夏休みに噂の孤島へ行ってみよう!


という話のようだ。


ようやく話の意図を理解したあたしは頷いた。
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