ヴァーチャル・リアリティ
『いいね。きっと楽しい旅行になるよ』


そう言ったのがつい3日前のことだった。


夏休みに入ると同時に百花の計画はとんとん拍子に進んで行き、今、ここにいる。


「真奈美、ちょっと近づいてみてよ」


百花があたしの背中を押してそう言った。


「なんで? 百花が行ってよ!」


あたしはグッと足を踏ん張って耐えて、百花の腕をつかむ。


山の山頂付近まで歩いて来て疲れているのに、こういう時にはお互い無駄に力が入る。


2人とも先を歩くのが嫌でその場で譲り合いを続けていると、時間は無駄に過ぎて行く。


「あぁ、もう! 一緒に行こう!」


10分ほどその場にいて、百花がしびれを切らしたようにそう言った。


「そうだね。そうしよう」
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