ヴァーチャル・リアリティ
あたしは息を吐きながらそう言った。


うっそうと生い茂っている雑草は腰のあたりまで身長があり、歩くたびに足元になにか絡み付いて来てヒヤリとする。


「蛇とか出てきそう」


百花があたしの腕にすがりつくようにして歩きながらそう言った。


「やめてよ。幽霊の方がまだマシ」


あたしはそう返事をして、わざと大股で歩き出した。


こうすると蛇が逃げて行くような気がしただけだ。


建物の前まで来るとあたしたちはほぼ同時に立ち止まった。


灰色のコンクリートには入口らしきものは見当たらない。


「これで合ってるんだよね?」


百花はようやくあたしから離れてそう言った。
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