ヴァーチャル・リアリティ
「わかんない。入口ないよね?」


グルリと一周回ってみても、どこにもそれらしきものは見当たらなかった。


「噂はただの噂だもんね。戻って来られないって言っても、入口がないんじゃ入れもしないじゃん」


あたしは安堵感からそう言った。


その時だった。


突然、何もなかった灰色の壁に筋が入ったのだ。


あたしも百花も咄嗟には何も言えなかった。


その筋をジッと凝視する。


筋はドアのような形状になり、それはモーター音と共に横へとスライドしたのだ。


「キャァ!」


百花が悲鳴を上げてしがみ付いてくる。
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