ヴァーチャル・リアリティ
意外とハッキリと聞こえて来る。


「聞こえるよ」


その声は梨花子だった。


姿は見えないが、声が聞こえてくることで安心できた。


『みなさまにはこれから脱出ゲームを経験していただきます。声のやりとりはできますが、答えを直接教えることはさけてください』


「答えを教えたらつまらないもんね」


アユがそう言って笑い声を上げた。


みんなでヒントを出しあえるのなら、1人だけ脱出できないこともなさそうだ。


『脱出していただく部屋は全部で5部屋。もし答えを教えてしまったり、制限時間内に脱出できなければ、その場でリタイアとなります。制限時間は一部屋20分』


アナウンスが聞こえて来る中、目の前に数字の1が書かれた扉が現れていた。


手を伸ばしてみると、ドアノブの感触があった。


しかしあたしは白線から一歩も外へ出ていないから、これは映像なのだろう。
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