ヴァーチャル・リアリティ
人間はどうしてこんなに強いんだろう。


何度殴っても男は簡単に死んではくれなかった。


横倒しに倒れて目を閉じても、胸の当たりで呼吸をしているのがわかった。


はやく。


早く死んでよ。


男は無意識の内に頭を庇っているが、その両手を足で蹴とばしてどかすと、再びバッドを振り下ろした。


白いプラスチックのバッドは見る見る内に血に染まっていく。


鉄の匂いがあたしの鼻孔を刺激する。


「まだ?」


思わず、そう呟いた。


倒れた男は微動だにしない。
< 198 / 220 >

この作品をシェア

pagetop