ヴァーチャル・リアリティ
☆☆☆

「もう卒業なんだねぇ」


しんみりとした口調でそう言ったのは綾瀬梨花子(アヤセ リカコ)だった。


梨花子とは高校に入学してから友達になり、3年間ずっと一緒にいた。


「卒業したら梨花子は実家に戻るんだっけ?」


そう聞くと、梨花子はポニーテールを揺らして頷いた。


寮生活をしている梨花子の実家は香川県だと聞いたことがあった。


会話のニュアンスが関西と似ているため、よく勘違いされるのだと言っていたことも思い出す。


「そうだよ。だからみんなと会えなくなっちゃう」


梨花子は大きな目を悲し気に細めてそう言った。


あたしはそんな梨花子の手を握りしめた。


思ったよりも華奢な手を、自分の両手で包み込む。
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