ヴァーチャル・リアリティ
女性の両腕を掴み、どうにか動きを防ぐことに成功する。


「離せ晴道!」


女性は叫び、持っているフライパンも離そうとしない。


「百花、早く!!」


後ろから押さえつけていられるのも時間の問題だった。


こちらが包丁を持っていたって、女性は容赦なく暴れ回る。


その顔に包丁の先が触れて頬から血が流れても、まるで気が付いていない様子だ。


百花が震えながら近づいてくる。


両手で握りしめている包丁も小刻みに震えていて心元ない。


それでもやるしかないのだ。


百花が大きく目を見開いて腕を上げた。


包丁の切っ先が女性の顔の高さで止まる。


「晴道ぃぃぃぃ!!」


女性の怨念にも聞こえる悲鳴。
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