ヴァーチャル・リアリティ
残念ながら今は3月だ。


海に入るにはまだ随分と早い。


「それなら、今年の夏に集まって海水浴するか」


後ろから声をかけてきたのは結城悠太郎(ユウキ ユウタロウ)だ。


陽大と同じサッカー部所属だったため、よく日焼けしている。


「いいね、また集まろうね」


悠太郎の意見にすぐさま賛成したのは梨花子だった。


1人だけ実家に戻らなければならない梨花子は、さっきから泣きそうな顔をしている。


「梨花子、寂しくなったらいつでも連絡してきていいからね」


「うん、ありがとう結愛」


梨花子はあたしの手を握り返してそう言った。
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