ヴァーチャル・リアリティ
場所はわからなくても、書いている数字はわかっているのだ。


あたしはテーブルに山積みにされている鍵をつかんで1つ1つ調べて行く。


調べ終えた鍵は床に落として行った。


気にしている時間はない。


そうしている間にも重低音が聞こえていて、壁は確実に近づいて来ているのだから。


テーブルの上の鍵をすべて調べ終えたころ、時間は残り5分に迫ってきていた。


途端に酸素が薄くなった気がして、呼吸が乱れる。


「どこだよおい……」


他のメンバーも苦戦しているのがわかる。


あたしはテーブルの後ろを向き、ベッドの引き出しを開けた。


ここにも無数の鍵があって、一瞬めまいを感じた。


ここまで大量の鍵を調べていたら、5分なんてあっという間に終わってしまうだろう。


でも、やるしかなかった。


あたしは汗の滲む手のひらを服で拭い、鍵を取り出して行ったのだった。
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