ヴァーチャル・リアリティ
『脱落者は黒崎アユさんです』


そう言った次の瞬間、アユの姿が映像の中に現れた。


アユは光の中に浮かんでいるように見える。


1人脱落してしまったアユは泣きそうな表情をしていて、それはとてもリアルだった。


もしかしたらリアルタイムでアユの映像を撮影し、こちらへ流しているのかもしれない。


そのくらいのこと、この施設ならできそうだった。


『これから京川結愛さんに脱落者としての刻印を押していただきます』


「え？」


突然名前を呼ばれてあたしは困惑するしかなかった。


「刻印ってなに？」


アユもキョトンとした表情を浮かべている。


『制限時間は10分。それでは、スタートです』


そこで音声は途切れた。


「なになに？　なにも見えないんだけど」


そう言ったのは梨花子だった。


「結愛、お間にはなにか見えてるのか？」
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