【完】キミスター♡
それからというもの…。
私は、張り詰めた精神状態で生活をしていた。

だから、受験で忙しいのを分かってはいるのに、頻繁に緋翠に会いに行っていた。


「どうしたー?みーか…?」

「んーん。なんでもない…それより、ごめんね?忙しいし大変なのに、毎日のように顔見に来ちゃって…」

それなのに、肝心なことが言えないでいた。
ギリギリの精神なのも自分をそうやって追い詰める人物が同じクラスにいることも…。


「海夏?」

「んー…?」

「久しぶりに一緒に帰ろうか」

「…ほんと?」

「…ん、ほんと」


すりっと頬を撫でられて、思わずくすぐったさに目を瞑る。
本当に緋翠は不器用だけど優しい。
夏休みを終えてから、ネガティブな所は相変わらず変わらないけれど、どことなく柔らかな雰囲気が出ていて、クラス以外の女子からは今まで以上にキャーキャー言われてる。

でも、緋翠は常に「海夏だけだよ」と微笑んでくれるから…私はその言葉にすっかり蕩けてしまっていた。


けれど…。
そんな私達の間に、溝が出来るような事件を…真人が持ってこようとは思わなかった。


その日も、私はHRを終えるとすぐに緋翠のいる教室に向かおうとしていた。

すると、そこへ最も話し掛けてきて欲しくない、真人が傍に近寄ってきた。


「おい、海夏」

「……」


私は無視を決め込もうとする。
けれど、真人は私の顔を覗き込むようにしてもう一度声を掛けてきた。

「そんなにつれなくするなよ。俺達幼馴染だろ?」


そう思っているのは、あんただけだ!と突っ込んでやりたかったけれど、周りの視線を感じて、私はすとんと席に座ると、短く何?という態度を取った。




< 45 / 72 >

この作品をシェア

pagetop