家族でも、幼なじみでもなくて。
「優衣ちゃん。僕は本当に優衣ちゃんのことが大好きなんだ。この気持ちは昔も今も変わらないよ」
急に改まってそんなこと言われたって、どうすればいいのかわからない。
「優衣ちゃんに振り向いて欲しくていっぱい好きって言ってたけど、その言葉も行動も全部優衣ちゃんにとっては嫌だったんだよね。本当にごめん」
「…っ、そうだよ! 私にとってりっくんは…」
「わかってる。“大嫌いな幼なじみ”だよね?」
あの時からりっくんが大嫌いだ。
ずっとずっと許せなかった。
でも…どうしてだろう。
すごく胸が痛い、苦しい……
「だから、僕は優衣ちゃんのこと…」
「陸矢! それくらいにしとけよ」
「好きになるのやめる」
私から離れてくれて嬉しいはずなのに、
なぜか、もやもやする……
この気持ちはなに?
「ってことだから、バイバイ」
ドアノブに手をかけて力なく笑うりっくんは、今にも泣き出しそうだった。
「待って!」
あれ? 私、どうして呼び止めたの?
言いたいことがあるわけでもないのに……
「ん?」
「な、なんでもない」
「なーんだ。少し期待しちゃった」
そう言ってりっくんは家を出た。
閉まるドアの隙間から、振り返ったりっくんと目が合った。
手を振る彼の目から、一粒の涙がこぼれ落ちるのを、私は見逃さなかった。