家族でも、幼なじみでもなくて。
「陸矢、帰るぞ〜」
「太一、僕は優衣ちゃんと帰るんだよ!」
「は? 相手にされてないのに? お前ってほんとバカだよな」
「うるさい!」
「うるさいのはどっちだよ。優衣も迷惑って言ってるのに毎日懲りないな」
「だって、僕は優衣ちゃんのことが大好きなんだもん!」
「はいはい。その話はクレープでも食べながら聞こうかな。ほら、帰るぞ」
「うわ〜ん。優衣ちゃん助けて〜」
私とりっくんと太一くんは幼なじみ。
小さい頃からずっと一緒だったから、太一くんはりっくんの扱いに慣れている。
小学校までは3人とも同じ学校だったけど、中学は私だけ寮付きの女子校で、りっくんと離れられて毎日楽しかった。
高校も家を出る許可をもらって、りっくんには秘密で少し遠い公立高校に通って1年間は平穏だったはずなのに……
どこから情報が漏れたのか、りっくんは私と同じ高校に入学してきた。
偏差値が高いことで有名なこの高校に、りっくんが入学できるわけがないのに。