家族でも、幼なじみでもなくて。
そして迎えた合格発表の日。


お母さんが見に行ってくれたから、合格してたら封筒があるはず……


緊張しながら家に帰ると、お母さんがニコニコしながら「おかえり」と言ってくれた。


もしかして……


「お母さん、私…」

「優衣! よく頑張ったね!」


そう言って、ぎゅーっと抱きしめてくれた。


やった! これで、私は解放されるんだ!

お母さんもこんなに喜んでくれて、すごく嬉しい!


「お母さん、ありがとう!」

「優衣……何もしてあげられなくてごめんね」

「そんなことないよ。お母さんがいてくれなかったら、頑張れなかったもん」


感謝しているのは本当のこと。

でも、お母さんは、私がりっくんと離れたくて受験したことを知らないから、ちょっとだけ胸が痛い。

もちろん、どうして受験したいのか理由は伝えたけど、本当の理由は伝えていない。

勉強したかったのと文化祭が楽しそうだったから入学したくなったっていうのは、どちらも事実。

嘘はついてない。


「お母さん。このことはりっくんに内緒ね?」

「どうして?」

「私がいなくなっちゃうことを知ったら、きっと、りっくんは泣いちゃうだろうし、それに、私も寂しくて泣いちゃいそうだから……ぎりぎりまで言わないつもりなの」

「そうね。わかった」

「ごめんね、お母さん」


これが初めてついた嘘だった……

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