家族でも、幼なじみでもなくて。
卒業式から何日か過ぎて、ようやく家を出る日がきた。


りっくんは昨日からサッカークラブの合宿だから、帰ってくるのはお昼頃。何も言わないで家を出れる。


「お母さん。私、頑張るね!」

「優衣……何かあったらすぐに連絡するのよ」

「うん。おじさん、お世話になりました」

「成長して帰ってくるのを楽しみにしてるよ」

「陸矢くんには言ったの?」


お母さんの言葉に私は静かに首を横に振った。


「なかなか言い出せなくて……お母さんたちから伝えておいて」


言い出せなかったんじゃない。

言わなかったんだ。


「直接言わなくていいの?」

「うん。永遠の別れじゃないんだし、また会えるから」

「そうだね」


会いたくないという気持ちが強かったけど、
心のどこかで、りっくんにきちんと伝えたいと思っていた。
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