家族でも、幼なじみでもなくて。
「おまたせ」

「寝癖直ってないよ」

「直したはずなのに!」

「優衣、タオル持ってきて」


太一くんにタオルを渡すと「ちょっとレンジ借りる」と言ってキッチンに入って行った。


「ここに座って」

「うん」


言われた通りに座ると、太一くんは私の後ろに座ってそっと髪にタオルを当てた。


「しばらくこのままだから、陸矢のところに行くことについて詳しく話して」

「わかった」


……と言ったものの、後ろに太一くんがいると、なんか変に緊張するんですけど。

愛海はさっきからこっちをじっと見てくるし。

とりあえず今はりっくんの話に集中しよう。


「アメリカに行くのは明後日。りっくんの許嫁もアメリカについて行ったみたい。りっくんのことを溺愛してるんだって」

「……写真でも見て一目惚れしたってところか」

「そうかも」

「優衣は写真見たの?」

「見てない。お母さんに、りっくんのお父さんと許嫁に気をつけてって言われた」

「これは大変なことになりそうだね」

「私、勝てるかな?」

「陸矢への想いが本物なら、勝てるんじゃない?」


背後から聞こえる冷たい声。

いつもなら「勝てるよ」って言ってくれそうだけど、今日は違う。


「太一くん、愛海。私、頑張るよ! 絶対負けない!」

「応援してるよ」

「ありがとう。愛海」

「……はい、あとはドライヤーで乾かして。俺、先に学校行ってるから。優衣、頑張ってね」

「う、うん。ありがとう」


あれ? 太一くん?

……行っちゃった。


「優衣。今は陸矢くんのことを考えた方がいいよ」

「そう、だよね」


太一くんの様子も気になる。
でも今はどうやったら勝てるか考えよう。

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