家族でも、幼なじみでもなくて。
「あら、優衣さん?」

「優衣さんじゃないか! また会えて嬉しいよ」

「先程はありがとうございました」

「僕たちの方こそ、お話しできて楽しかったよ」


おじさんとおばさんの娘が愛莉さん、なんだよね?


「愛莉。帰るわよ」

「どうして!? 私は陸矢様と…」

「婚約の話は無かったことにしたんだ」

「お父様、何をおっしゃって…」

「優衣さんの話を聞いて、陸矢くんには優衣さんがふさわしいと思ったんだよ。親の話も聞かずに勝手に行動してしまうような人と、陸矢くんも一緒になりたくはないだろうからね」

「そんな……!!」


愛莉さんは顔を青くしてその場に座り込んだ。

突然すぎて私もお母さんもどうすればいいのかわからず、立ち尽くすしか無かった。


「美佳さん。娘が大変ご迷惑をおかけしたようで…本当に申し訳ない。今回の件は雅人くんにも説明したから心配いらないよ」

「そう、ですか…」


婚約破棄したのは、私のせいなのかな?
いろんな人に迷惑を……


「優衣さん。君なら絶対に大丈夫だから、彼に想いを伝えなさい」

「……はい」

「愛莉のことは気にしなくていいからね」


おじさんは私の肩をぽんっと優しくたたいて「またね」と手を振った。

おばさんに手を引かれながら歩く 愛莉さんは落ち込んでいるせいか、とても小さく見えた。


「優衣、とりあえずここを出ようか」

「うん」

「あとでゆっくり話を聞かせて」


私のせいで愛莉さんが悲しい思いをした。
私のためにおじさんが大きな決断をしてくれた。

私はりっくんのことが好き。愛莉さんに負けないくらいに。

だから、今度は私がりっくんに振り向いてもらう番。

今までの自分を恨んでいる暇なんてない。
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