家族でも、幼なじみでもなくて。
お母さんと別れたあと、ホテルにチェックインをして部屋に入った。
すぐにシャワーを浴びて寝る準備をして、それからベッドにダイブした。


パーティー用のドレスは手配してくれるらしい。

海外のすごい方たちが集まる大きなパーティーに、本当に参加しても大丈夫なの?
りっくんに会いにきたのにどうしてこんなことに!?

ベッドに横になってそんなことを考えていると、突然着信音が鳴った。
画面をみると『太一くん』と表示されていた。


「…もしもし」

『優衣? 大丈夫?』

「いろいろあったけど、なんとか……」

『無理はするなよ?』

「うん」


太一くんの優しい声が、疲れていた私の身体に響く。


『陸矢には会えた?』

「それが…まだ会えてない」

『そっか』

「明日、パーティーに参加することになって、そこでりっくんに会えると思う」

『パーティー!? ……あ、優衣が参加するらしくて…』

「太一くん? 誰かいるの?」

『今、愛海先輩と一緒にいるんだ』


愛海と太一くんが一緒にいるの?
日本は今、お昼頃。学校だからスマホは使えないはず……


『優衣!』

「愛海、太一くんとどこにいるの?」

『青葉公園』

「……学校じゃないの?」

『今日は全校生での遠足だよ。でもあたしたちは優衣のことで頭がいっぱいで、正直遠足どころじゃないから、太一くんが電話してみようって』

「あー、納得」


2人で学校サボって遊んでるのかと思った。
そんなことするような人たちじゃないってことはわかってるけど。


『あ、そろそろ時間だ。優衣、陸矢に会ったらまた連絡して』

「うん、わかった」

『おやすみ』

「私のことは大丈夫だから。2人も遠足楽しんでね」


電話を切ってそっと息を吐いた。

大丈夫。私なら絶対……こんな風に思うのは何度目だろう?


ビーズの指輪をぎゅっと握って、そのまま眠りについた。
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