家族でも、幼なじみでもなくて。
「ここからは1人で行くことになるけど、大丈夫?」

「うん。ある程度英語はできるし、頑張るよ」


そうは言ったものの、本当はすごく不安。
異国の地で、大きなパーティーに参加すること自体が大変なのに……

私、人がたくさんいるところは苦手なんだよね。我慢、するけど。


受付を済ませて中に入ると、紳士淑女がたくさんいた。
思ったより子どももたくさんいるな。

大きなシャンデリア。有名な絵画。綺麗な彫刻。ふかふかな絨毯。
美味しそうな食べ物や飲み物もある。

これからどうしたらいいの?

一人で悩んでいると主催者と思われる男の人の挨拶が始まった。

速くて聞き取れない……

挨拶が終わって周りが賑やかになる。

それにしてもすごい人の数……
一体何人いるんだろう?

本当は良くないのに悪い癖でつい辺りを見回してしまう。


……気付いた時には遅かった。

視界がぐにゃりと歪んで、立っていられない。
なんとかして壁際に移動し、その場にしゃがみ込んだ。

気分が悪い、人酔いだ……

誰かに助けを求めようとしても、頭が働かなくて英語が出てこない。


「Are you all right?(大丈夫ですか?)」


そんな時、声をかけられた。
聞き慣れたやさしい声。
きっとこれは……


「……りっくん」


小さな声で呟いた 次の瞬間、私の視界は真っ暗になった。
< 60 / 68 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop