家族でも、幼なじみでもなくて。
陸矢side


突然父さんに「許婚の話はなくなったから自由にしなさい」と言われて驚いた。

今更…アメリカに来てから言われても、優衣ちゃんに伝えることなんてできないのに。

焦っていた自分がバカらしく思えてきて、すごく悔しかった。


パーティーは退屈だった。
勝手に帰ろうかと思って出口へ向かう途中、1人の女の子の様子がおかしいことに気づいた。

近づいて優しく声をかける。

「Are you all right?(大丈夫ですか?)」

「……りっくん」

聞き覚えのある声と呼び方に一瞬耳を疑った。

こんなところに優衣ちゃんがいるはずはない。

事情を話して女の子を別室へと連れて行き、ソファに寝かせて自分のジャケットをそっとかけた。


……やっぱり、優衣ちゃんだ。

綺麗なドレスを着ていても、普段とは違うメイクをしていても、雰囲気が違くても……優衣ちゃんだ。好きな人を間違えるはずはない。


ここに呼んだのは、父さん?
それとも、おばさん?

きっと両者。
2人には僕らの気持ちなんてお見通しだろうし。
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