家族でも、幼なじみでもなくて。
背後から何かが床に落ちる音がして、優衣ちゃんが起きたんだとわかった。

泣いていたことはバレたくない。
こんなかっこ悪いところ見せたくない。

そう思ってつい、強い口調になってしまった。


「……りっくんのことが好きだから。もう一度、私のことを好きに、なってくれませんか?」


そんなこと……今更言ったって……


「……遅いよ」

「え?」

「遅いんだよ、バカ! それに、僕がいつ嫌いになったなんて言った? ずっと大好きだって言ったでしょ?」

「好きになるのやめるって…」

「“これ以上”好きになるのはやめるってこと! 嫌いになるわけないじゃん! 僕は今でも優衣ちゃんのことが大好きなんだから!」

「りっくん…ごめんね」

「ごめんは禁止」


振り返ると優衣ちゃんの頬は涙で濡れていた。

また僕は、優衣ちゃんを泣かせてしまった……

これからはきみを泣かせたりはしないと、約束するよ。

心を落ち着かせてゆっくりと口を開く。


「優衣ちゃん。あの日からずっと大好きです。僕と、付き合ってください」

「はい」

「笑ってくれた!」


いつ振りだろう? 優衣ちゃんの笑顔は。

僕が優衣ちゃんを好きになったのは、
その笑顔に惹かれたから。

嬉しくなってぎゅっと抱きしめる。


「ずっと好きでいてくれてありがとう」

「好きになってくれてありがとう! 優衣ちゃん!」


毎日笑顔で過ごせるように。
僕が必ず幸せにしてみせる。

大好きだよ、優衣ちゃん。


窓から差し込む月明かりに照らされながら、僕らは甘い口づけをした。


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