家族でも、幼なじみでもなくて。
「……好きだよ」
「わっ!」
……突然耳元で囁かれてびっくりしたけど、
こんなことを言うのはあいつしかない!
肩に触れていた手を払いのけ、彼を思いっきり突き飛ばした。
「悪ふざけもいい加減にして!」
「あはは、バレちゃった〜」
「なんでついてきたの!?」
「優衣ちゃんのことが心配だったからだよ」
「心配してなんて頼んでない!」
「でも、僕がいなかったら優衣ちゃんは今頃、知らないお兄さんたちに連れていかれてたと思うよ?」
「は?」
「さっきたまたまお兄さんたちの話している内容が聞こえちゃったんだ」
「私がそんなことされるわけないでしょ?」
「そうなんだ…」
りっくんは目を細めてゆっくりと近づいてきた。その口元には怪しげな笑みが浮かんでいる。
「なっ…!」
いきなり手首を掴まれた。
簡単には振りほどけないくらいの力で。
ひんやりとしたブロック塀の冷たさが背中から伝わってくる。
「離してよ」
さっきとは違った恐怖が全身を駆け巡り、どうしようもなくなった私の声は震えていた。