世界を旅する武芸少女
温泉に向かう道中はとても暗く、灯りがないと真っ暗で歩けない。この辺りには家も無ければ外灯も無いため月明かりしか闇を照らすものが無い。

「これを使うのは久しぶりだが・・・。」

遥は自分の国ではよく使われる提灯を取り出した。遥の持つ提灯は普通の提灯とは違い、自分の家の家紋の模様があり、それを見た限りではどこかの神社の物の様に見える。

提灯に火を灯すと明るくなり、真っ暗で前が見えなかった夜道が見えるようになった。

遥は本来提灯を持って旅に出るのはあまり気が進まなかった。使うと自分の家の家紋を晒すことになり、それにより自分の出自がバレるからだ。

遥の家は剣術や弓術や砲術など様々な武芸の師範をしていると同時に上級神社の神主をしている家柄である。この神主、いわゆる神職と思われるのが厄介で、神職と言うと一般的にお祓いをしたりするのだが、遥は小さい頃から武芸一筋で育った為、お祓い出来ないのである。その代わり、霊体を相手に刀で攻撃してもダメージを与えることが出来る。本来は霊体に攻撃してもダメージを与えることは出来ないのだが、遥は神職の家の生まれで霊体を斬り伏せる事が出来る。

まあ、つまり遥は神職の家の出の癖に巫女さんらしくないと思われるのが嫌なのだ。

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