世界を旅する武芸少女
5分くらい歩くと湯気が見えてきた。こんな何もない様な痩せた土地に温泉があるというのに驚きだ。

お湯を見てみると誰かが汚したり荒らしている形跡は無いところを見るとこの辺で夜うろつく人はいないのだろう。それ故にこの温泉は今の遥みたいな人にとってはオアシスの様だろう。

温泉の周りを見るとしっかりと掃除をしているのが分かるほど綺麗だ。つまり、定期的に掃除をしている管理者がしっかりといるってことだ。こんな、寒くて何もないところの温泉や小屋をわざわざ掃除をしてくれるなんて管理者は本当に優しいな。

味噌鍋を食べたとはいえ流石に寒いため、着物を脱いでさっさと温泉に浸かる。

ドッボ〜ンとまるで子供みたいに勢いよく風呂に入る。これも人がいない所ならでは出来ることである。

湯の温度はちょっと熱いぐらいで浸かるには良い温度である。

「はぁん〜、暖かくて気持ちぃ〜。」

まるで疲れが吹っ飛んでいくような気持ち良さで遥の顔は普段は見せない幸せそうな顔になった。

「この温泉は肩凝りに効きそうな湯だな。肩の凝りが取れていく感じが思いっきりする。はぅ〜気持ちいいな。」

しっかりと肩まで浸かり、腕や足の筋肉を解しながら自分の貧相な胸を何故か見る。

「ふん、私に胸などいらないのだ。私は武に生きていくもの、天の武・・・いわゆる天武の極に到達するまで胸などいらないのだ。」

これも人がいないからこそ大声で言えることである。普段は自分の胸に関して何も思わない振りをしているが実は滅茶苦茶気にしていて、遥は常日頃からの悩みでもあった。

こうやって大声で言うことにより遥のストレスは発散されて精神衛生上にも良くなっていく。

誰も来ないような寂しい土地にある温泉にはこういう効果もあるのである。
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