世界を旅する武芸少女

「おっさんは強いな。私では八艘飛びは出来そうにないな。だが、これなら出来る。」

すると遥は走り出した。それもとてつもない速さでおっさんの周りを走り出した。

この時、会場の誰もが驚いた。何と、遥が3人いるように見えるのである。

「これは分身かっ・・・！？遠い東の島国にいる忍者と呼ばれる者が使う忍術っ・・・！？」

忍者と勘違いされて少し困り顔な遥。剣士である遥は同時に少し忍者に憧れもある。忍術とか１度使ってみたいから。

だから、勘違いでも忍者と呼ばれたことに嬉しいけど複雑な気分なのだ。

「これは瞬の秘技『月影-ゲツエイ-』だ。私の動きの速さと、闘技場内の光で私の残像が出ているだけだ。忍者の分身の術に似ているが全然違うぞ。」

そう、忍者の分身は止まっていても分身が出来るが、『月影』は動きの速さと周りの光を利用して残像を相手に見せるだけである。

「しかし、残像で3人見えていても結局は大したことないよの。なぜなら、残像は攻撃してこないから。」

すると遥はその残像と共におっさんに襲いかかる。おっさんの目からは3人に襲いかかられた様な感じに見えるだろう。

「ふん、恐らく3人いてもそのどれもが本体では無い。その証拠に3人に襲われても何も攻撃を受けないからな。恐らく本体は残像を出しながら、私を攻撃する隙を伺っているはず。」

「その通りだ。」

おっさんの上から遥の声が聞こえる。おっさんは「まさかっ？」と思い、頭上に刀を振りかざす。

しかし振りかざしてもまるで意味がなく、おっさんは遂に肩に斬り傷を受けてしまった。

「ぐっ・・・！？まさか空から現れるとは思わなかったぞっ・・・！一体どういう運動神経なんだっ・・・！」

遥はうずくまったおっさんの前に行き頭の上から刀を振り落とそうとする素振りを見せる。

「ぐっ・・・。小娘ェ、ワシの負けだっ・・・力量が違いすぎるっ・・・！」

おっさんは降参をした。何ともあっけない形で勝負の幕が閉じた。

しかし、遥は満足した様子である。今まで見た事の無い技と戦法を見せたおっさんに敬意を表した。