クールな彼の甘い素顔
立ち止まっていてくれた彼の足が、また前に動き出す。
そしてわたしはまた早足になる。
「待ってよ.........
わたしだけが、わるいみたい.........っ」
車の音にかき消されるくらい、小さく小さくつぶやいたわたしの言葉はしっかりと彼の耳に届いていて。
「...どういう意味」
彼の歩く速度が少しだけ遅くなった。
「...茅さんのこと、家に泊めたって...聞いた...」
わたしはべつに、反撃したいわけではない。
ただ確かめたいだけだ。
でも、翔くんはそんなことしないって。
それだけは信じてた。
「泊めた。それがなに」
返ってきた吐き捨てるような言葉に、わたしはもう彼を追いかける力なんて湧いてこなかった。
一瞬で心が空っぽになった。
どこかに消えてしまいたい。
この暗闇に、溶け込んでしまいたかった。